4-3 売りヘッジとは - 先物・オプション入門

売りヘッジとは

ある商品を保有しており(または将来確実に入手することになっており)、将来時点でその商品の売却を予定している場合に、今後の価格変動(特に値下がり)による損失を回避するため、現時点での価格で将来の一定期日に商品を売りたい場合に用いられるのが、「売りヘッジ」です。現時点で将来の売却数量に相当する先物の売りポジションを建てておき、将来、現物の売却を行うときに、この先物の売りポジションを買い戻しにより決済する方法が一般的です。

こうしたオペレーションによって、価格が下落した場合には、現物取引においてはコスト増が生じますが、先物取引では利益が発生するので、先物取引の利益で現物取引のコスト増を相殺できる訳です。 反対に、価格が上昇した場合には、先物取引では損失が発生しますが、現物取引においては利益が生ずるので、先物取引の損失は現物取引の利益で相殺できる訳です。

後者の場合、「ヘッジしなければ現物取引(値上がり)の利益を享受できたのに」という意見が出ることが多々ありますが、ここでも売りヘッジの目的はあくまで、ある時点での価格で将来の商品の売却収入を確定する点にあることを再度確認しておきます。

売りヘッジの具体例

ある鉱山会社が自社生産の金地金を半年後に10キログラム、そのときの市場価格で商社に販売する契約を結んだケースを考えてみましょう。ここでこの鉱山会社の生産採算価格は1,800円/グラムだと仮定します。今現在の金の市場価格は2,000円/グラムですが、実際に金地金を渡すのは半年後だとします。金地金の価格がずっと2,000円/グラムのままであれば、このビジネスは十分採算がとれる(200円/グラムつまり10キログラムで200万円の利益が得られる)のですが、半年後には金価格は採算のとれない水準まで下落してしまうかもしれません。そこで、現時点において10キログラム分相当の金先物のポジションを売り建てておくのです(先物価格と現物価格は同じ動きをするという仮定にしたがって、2,000円/グラムで先物の売りポジションを建てたとします)。

このとき、半年後に金価格が1,500円/グラムに値下がりした場合には、どのようになるでしょうか。ヘッジをしていなければ、採算価格が1,800円/グラムの金地金を1,500円/グラムで10 キログラム販売しなければならないので、現物取引に係る手数料等を無視しても、300円/グラム、つまり10キログラムで300万円の損失が発生してしまいます。しかし2,000円/グラムで売り建てた先物ポジションは、先物価格も現物価格と同じような動きをするので、その先物価格も1,500円/グラムあたりまで下落しているはずです。したがって、この売りヘッジのポジションを買い戻して差金決済すれば、500円/グラム(=2,000円/グラム-1,500円/グラム)、つまり10キログラムで500万円の利益が先物市場から得られることになります。この先物取引から得られた利益500万円で、現物取引で発生する損失300万円をカバーすれば、差し引き全体として200万円の利益(当初の思惑通りの利益)が確保されたことになります。

反対に、半年後、金価格が2,500円/グラムに値上がりした場合には、先物取引では500万円(=(2,000円/グラム-2,500円/グラム)×10キログラム)の損失が発生しますが、現物取引では1,800円/グラムが採算価格のところ2,500円/グラムで販売できるので、700万円(=(2,500円/グラム-1,800円/グラム)×10キログラム)の利益を上げることができます。全体としては差し引きで、この場合もやはり200万円の利益が確保されたことになります。


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