検定試験テキスト -石油取引の基礎知識- - 学習

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第1章 原油の基礎知識

第1節 原油の商品特性

第1項 原油について

原油の成因には諸説あるが、現在のところ「有機起源説」や「無機起源説」などがあるが、有機起源説の中でも、 「ケロジェン起源説」が有力で、プランクトンなどの生物の遺骸、藻類などの有機物が海底や湖底に堆積し、それらが化石化しケロジェンと呼ばれる物質に変化し、長期間地熱と地圧の影響を受け熟成されて石油に変化したとされている。
 化学的には、原油は多数の似通った分子式をもつ炭素数5以上の炭化水素を主成分にした液体であり、油田から産出された後、随伴ガスなどを分離し、水分などの不純物を除去した状態のものを指す。
この原油を加熱炉で熱し、常圧蒸留装置(トッパー)で精製して、LPG、ガソリン、灯油、軽油、重油、潤滑油などの各種石油製品を生産する。
 インドネシアの代表油種であるスマトラ・ライト(ミナス原油)など炭素数が多い炭化水素類を多量に含む原油については常温で半固体のものもある。

第2項 原油の種類
 原油は、産地・物理的性状・化学的性状によって分類することができる。

  1. 産地別
     原油は採れる国や産地、油田によって、その物理的性状や化学的性状が異なるため、採れた国名や産地名、あるいは油田名によって原油の種類(油種)を区別している。例えば、アジア向けの代表的な油種として アラビアン・ライト、アラビアン・ヘビー、アラビアン・ミディアム、アラビアン・エクストラ・ライト(以上、サウジアラビア)、ドバイ、マーバン、アッパーザクム(以上、アラブ首長国連邦=UAE)、スマトラ・ライト(インドネシア)、イラニアン・ライト、イラニアン・ヘビー(以上、イラン)、バスラ・ライト(イラク)、オマーン(オマーン)、クウェート(クウェート)、カタール・マリーン(カタール)、ソコール(ロシア)、ナイル(南スーダン)などが挙げられる。
     日本に輸入される原油は、 2012年では30か国109種あり、 産油地域は中東を中心に、東南アジア、中南米、アフリカなど多国に及ぶ。最近では、ロシア産原油も輸入されている。このように輸入供給国の多様化により安定調達を図ってきたが、近年の石油需要の増加、非中東地域の供給余力の低下などにより再び中東への依存度が高まっている。
    なお、東京商品取引所に上場されている原油は、アジア市場の指標原油とされるドバイ原油オマーン原油の平均価格(プラッツ社発表)を円建てにしたものである。
  2. 図1 わが国の国別原油輸入比率の推移 (単位:%)

  3. 物理的性状別
    API度」を用いた比重表示法による原油の分類がある。API度とは米国石油協会(American Petroleum Institute)が定めた原油及び石油製品の比重を示す単位のことである。一般的に軽質原油はガソリン、灯油及び軽油の得率(原油から石油製品が取れる割合)が高く、割高に評価される傾向がある。
    具体的には、水と同じ比重を10度とし、数値が高いほど軽質と定め、39.00度以上を「超軽質」、34.00度~38.99度を「軽質」、30.00度~33.99度を「中質」、26.00度~29.99度を「重質」、26.00度未満を「超重質」という。比重による原油の分類の一例を表1にまとめた
  4. 表1 API 度による原油の分類と例
    分類 比重(API度) 原油の例
    超軽質 39.00以上 WTI(アメリカ)、マーバン(UAE)、タピス(マレーシア)
    軽質 38.99~34.00 ブレント(イギリス)、セリア(ブルネイ)
    中質 33.99~30.00 アラビアン・ライト(サウジアラビア)、アラビアン・ミディアム(同左)、
    ミナス(インドネシア)、ドバイ(UAE)、オマーン(オマーン)
    重質 29.99~26.00 アラビアン・ヘビー(サウジアラビア)、カフジ(中立地帯)
    超重質 26.00未満 ナポ(エクアドル)
    (出所)「石油資料(2007年版)」等による
     

  5. 化学的性状別
     硫化水素等の硫黄分の含有量が少ない原油は「スイート原油」、多い原油は「サワー原油」と呼ばれる。
    硫黄分を含んだ原油を燃焼させると酸性雨の原因となる硫黄酸化物が発生するため、一般的に、スイート原油のほうが脱硫コストを低減できることから、割高に評価される傾向がある。中東産原油の多くは硫黄濃度が高く、わが国の中東依存度は高いため、石油精製において脱硫装置などの2次装置により精製を行っている。
     一方、南方アジア産原油などの低硫黄原油は脱硫せずそのまま生焚きすることができることから、発電用として利用されることがある。このように硫黄分の違いから、中東産原油と南方アジア産原油では、対象とするマーケットが異なるといわれており、別々の価格形成が行われている。
    また、炭化水素のタイプ別による分類として、次のように大別できる。

    (1)パラフィン基原油
     精製した場合、灯油、軽油、重油、潤滑油、ワックスについては良質なものがとれるが、ガソリンについてはオクタン価が低くなる傾向にある。ミナス(インドネシア)、大慶(中国)などが代表的油種。

    (2)ナフテン基原油
     オクタン価の高い良質なガソリンを精製することができ、アスファルトも良質なものがとれるが、灯油、軽油、潤滑油の品質は劣る。ベネズエラ原油、メキシコ原油、カリフォルニア原油などがこれにあたる。

    (3)混合基原油
     (1)と(2)の中間の原油。良質の灯油、軽油、潤滑油が取れる。アラビアン・ライト(サウジアラビア)やカフジ(サウジアラビア及びクウェートの中立地帯)が代表的油種。
第3項 原油の仲間
  1. 天然ガス
     「天然ガス」は原油が熟成・熱分解したものと考えられている。天然ガスは化石燃料の中で燃焼によるSOx(硫黄酸化物)、NOx(窒素酸化物)、CO2(二酸化炭素)などの排出量が少なく、環境にやさしいエネルギーとして注目されている。中東に偏在する石油とは異なり、世界中に分散している資源でもある。
     現在では、家庭用・ボイラー・発電用として利用されており、コージェネレーションやCNG(圧縮天然ガス)自動車の燃料として利用拡大が見込まれる。将来的にも、実用化が急がれる燃料電池に天然ガスが利用されることが有力視されており、需要が拡大する可能性が高い。自動車用の燃料電池への水素原料として最有力視されているメタノールも主に天然ガスから生産される。
    資源エネルギー庁の「総合エネルギー統計」によれば、日本における一次エネルギー国内供給に占める天然ガスの割合は、 2011年度(熱量換算ベース)において石油(43.1%)に次いで第2位の23.3%である。
     また、天然ガスを零下162℃で冷却・液化したのがLNG(液化天然ガス)である。LNGは体積を気体時の600分の1とした無色透明な液体であり、輸送・貯蔵に適している。LNG事業は、液化、輸送、貯蔵、再ガス化に多額の資金を要する(※1)
     天然ガスの利用拡大に伴い貿易量も増加している。輸入方法としては、欧米では約9割がパイプラインを通じて行われている。一方、日本や韓国は全量LNGとして輸入しているが、世界全体でみればパイプラインが3/4で主流である。 わが国は天然ガスの自給率は2011年度で約3%足らずで、多くを輸入している。2011年度の日本のLNG輸入量は7,521万トンで、 世界最大のLNG輸入国となっている。主な輸入先はマレーシア、オーストラリア、インドネシア、カタール、ロシア、ブルネイ、UAEなどである。
    ※1. この一連の流れをLNGチェーンという。
  2. 非在来型石油・天然ガス資源
     明確な定義はないが、通常の石油・天然ガスのようにこれまでの技術では安価な採取が困難な石油・天然ガスを指して非在来型と総称されることがある。石油の例としては、オイルサンド、オリノコタール、オイルシェールなどがあり、天然ガスとしてはタイトサンドガス、シュールガス、コールヘッドメタンなどがあり、メタンハイドレートもこれに分類されることがある。
     このうち、新たな天然ガス「シェールガス」は、近年、急速に資源開発が進み、新たなエネルギー源として注目を集めている。シェールガスは泥土が堆積して固まった頁岩(けつがん=シェール)にほぼ均一にたまっている天然ガスであり、近年、実用的な採掘技術が米国で開発されたことから急速に生産量が増えている。2011年7月には、三菱商事と東京ガス、大阪ガス、中部電力などがカナダのエネルギー大手企業と共同でカナダの太平洋岸にLNGの大規模プラントを建設する計画が明らかとなった。この計画では、日本のLNGの年間輸入量の1割強に相当する1,000万トン規模の生産量を目指すとされており、すでにフリーポート(テキサス州)やキャメロン(ルイジアナ州)のプロジェクトはそれぞれ2013年5月、同年9月に米国政府の認可を取得済みで、2017年以降、日本への輸出が開始される見込みである。シェールガスの特徴として、埋蔵地域が従来の産油・産炭国に偏っておらず、米国では少なくとも約500兆立方フィート、世界では3000兆立方フィートを超す埋蔵量があると見られていることから、従来の産出国の価格支配力を弱めつつあり、「シェールガス革命」ともいわれている。
      オイルサンドは一部カナダで商業生産が行われているが、ナイジェリア、マダガスカル、米国にも賦存する。また、オリノコタールは、ベネズエラのオリノコ川流域に存在する超重質油はすでに発電用燃料として利用されている。オイルシェールは米国、ロシア、ブラジル、中国、カナダなど世界各地に存在している。原油価格が高騰すれば、こうした非在来型のエネルギー生産が本格化すると期待されている。
  3. バイオ燃料
     バイオ燃料とは、主に植物を原料にしてつくられるアルコール系燃料である。植物が光合成により、空気中より温室効果ガスであるCO2を吸収したものが、再度燃焼により空気中に放出されるだけ(カーボンニュートラル)なので、環境に優しい燃料(※2)として注目が集っている。主にサトウキビ、小麦、トウモロコシなどが原料として利用されているため、バイオ燃料用の新たな需要により、砂糖や穀物価格が高騰するという現象も観測された。このため、本来食用や飼料とならない廃木材、廃棄紙などを原料としたセルロース系バイオ燃料の研究もはじまっている。

   ※2. 実用化にあたっては、燃料となるまでの成育、収穫、集荷、処理、輸送などへの投入エネルギーやコスト等も考慮する   
       必要がある。


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第2節 原油の埋蔵量

資源量(Resources:発見または存在が確認されたすべての地下資源(炭化水素)の量)のうち、残存しており将来にわたって技術的、経済的に回収可能な量を「埋蔵量(reservesあるいはrecoverable reserves)」という。なお、生産開始以前に存在していた原油・ガスの総量は「原始埋蔵量(original oil (gas) in place)」と呼び、前述の「埋蔵量」と区別される。「埋蔵量」は、新たな油田の発見や採掘技術の進歩などによって変化し、また、その評価の精度によってさらに区分される。試掘井などにより存在が確認された資源量を「確認可採埋蔵量(proven reserves)」、その周辺に存在が予想される資源量を「推定埋蔵量(probable reserves)」、さらに、地質学的に推定される最大資源量を「予想埋蔵量(possible reserves)」と呼ぶ。回収率でいえば、通常、「確認埋蔵量」は90%以上、「推定埋蔵量」では50%以上、「予想埋蔵量」では10%以上必要とされ、一般的に「埋蔵量」という場合は、「確認可採埋蔵量」を指すことが多い。
 以上の定義は石油業界で広く採用されている石油技術者協会(SPE:Society of Petroleum Engineers)と世界石油協会(WPC:World Petroleum Congress)による基準に基づいて整理したものであるが、埋蔵量の評価手法は、国や企業によって異なり、上記SPE/WPC基準のほかに代表的なものとして、米国証券取引委員会(SEC:Securities Exchange Commission)による基準がある。SEC基準は、投資家保護の観点から石油会社による油田埋蔵量の過大な申告を防ぐため、「確認埋蔵量」のみを埋蔵量として認めている。SECの定義では、確認埋蔵量を既存の坑井及び施設を利用して回収することができる確認開発埋蔵量(proved developed)と将来掘削される坑井及び施設を利用して回収することができる確認未開発埋蔵量(proved undeveloped)の二つに区分している。
 BP社の統計(※3)によると、2012年末の世界の原油確認埋蔵量は約1兆6,689億バレルで、可採年数(年末の確認埋蔵量をその年の生産量で除した数値、R/P Ratio)は52.9年である。
 同年末の確認埋蔵量のうち約72.6%(1兆2,119億バレル:可採年数88.5年)がOPEC(石油輸出国機構)によるもので、地域別では中東諸国が約48.4%(8,077億バレル:可採年数78.1年)を占めている。
 可採年数は、新規油田の発見や開発技術の進歩、回収率の向上などの要因もあり、近年ほぼ横ばい状態にあり、これから先も当面は現状を維持すると見込まれている。その一方で、近年の石油価格高騰時には、全世界の石油産出量がピークを迎え需要の伸びに追いつかない時代になるというピークオイル論が話題になった。
  なお、 原油やオイルサンドなど非在来型石油を合わせた石油資源全体の可採埋蔵量は飛躍的に増加しており、IEAの長期見通しにおいても150年以上と見込まれている。

※3. BP「BP Statistical Review of World Energy 2013」



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第3節 原油生産の現状

第1項 原油の探鉱・開発

原油の探鉱では、まず、人工衛星やスーパーコンピューターを駆使して原油が存在する特徴を備えた地質帯を特定化する。次に、特定化された地表面において、磁力や人工地震による探査を行い、より可能性が高いエリアの中心部で試掘を行う(※4)。このような探査・掘削の最先端技術の多くは、米国の企業が開発したものである。
 1本の井戸を掘る平均的なコストは数億円~数十億円になり、海洋のほうが陸上より高い傾向にある。大規模かつ精密な事前調査にもかかわらず、このうち実際に油田として商業生産が可能な油田は、「100本で2本」と僅か2%前後であるといわれる。また、試掘が成功した場合でも、その後の事業化(生産・出荷インフラの整備)に、さらにその数倍のコストがかかると言われており、比較的割安な開発コストで、商業生産に移行できるケースは少なくなっている。
 現在、新規油田開発で最も有望視されているものの一つに中央アジア・カスピ海地域がある。しかし、同地域で生産した原油を出荷するためには、パイプラインの敷設が不可欠で、生産設備以外にも巨大なインフラ投資が必要とされる。
 
※4 具体的には、三次元地震探鉱技術やある地点に関して時間的な変化を捉えた四次元地震探鉱技術がある。また、海洋における搾油においては大偏距掘削技術により比較的小規模な海洋プラットフォームの設置でよく、また水平に坑井を通すことができ、複数の油田からの搾油を一本の坑井で行うことができる。これにより、非OPEC地域の原油埋蔵量、生産量を低コストで飛躍的に増加させることができた。

第2項 石油・天然ガス開発事業
  1. 事業形態
      石油・天然ガス開発事業は事業リスクが極めて高く、かつ、投資が巨額にのぼることから、開発プロジェクトについては、複数の企業がリスクと資金負担の分散を目的としてパートナーシップを組成し、共同事業を行うのが一般的である。共同開発プロジェクトではパートナーのうちの1社がオペレーターとなり、パートナーを代表して操業の責任を負うことになる。オペレーター以外の企業はノンオペレーターとして、オペレーターが立案・実施する探鉱開発計画や作業を吟味し、あるいは一部操業に参加しつつ、出資シェアに応じた資金負担を行う。また、こうした開発プロジェクトに複数参加することで、開発事業者としては二重のリスク分散を図っている。
      石油開発会社がパートナーとして参加する場合、操業などの責任を負うオペレーターとなるノウハウが求められており、一方、商社の場合は操業にはタッチせず、もっぱらノンオペレーターとして参加しているものの、販売力や資金力が求められている。
  2. 産油国との関係
      鉱区の権益を獲得する際に、生産国との間で結ばれる契約形態の主なものとしては、「コンセッション契約」、「生産分与契約」、「サービス契約」の3つがある。

    • 「コンセッション契約」: 産油国政府・国営石油会社等から契約または認可により鉱業権(日本における鉱業権ならびに海外におけるパーミット、ライセンスまたはリースを含む)が石油開発会社に直接付与される契約。石油開発会社は投資して得られる石油・天然ガスの処分権を持ち、売上からロイヤリティー、税金等を産油国へ支払う。受入国が先進国の場合はこの形態が多い。
    • 「生産分与契約」: 一社または複数社の石油開発会社がコントラクターとして産油国政府・国営石油会社等から探鉱・開発のための作業を自身のコスト負担で請負い、コスト回収分及び報酬を生産物(原油・天然ガス)で受取ることを内容とする契約。探鉱・開発の結果、石油・天然ガスの生産に至った場合、コントラクターは負担した探鉱・開発コストを生産物の一部より回収し、さらに残余の生産物については、一定の配分比率に応じて産油国・国営石油会社とコントラクターの間で配分する。探鉱作業の失敗や生産量の減少等により期待していた生産を実現できない場合は、コントラクターがリスクを負うことになる。
    • 「サービス契約」: 開発会社が探鉱・開発作業を請負い、一定の報酬を受取る契約。事業リスクは産油国・国営石油会社が負うことになる

    受入国が先進国以外の場合は、「生産分与契約」や「サービス契約」が一般的である。「サービス契約」以外の形態では、開発会社が権益分の原油を販売することができる。生産分与契約にあたっては、コスト回収分として受け取る量を計算するのに利用される生産物価格は公式販売価格となっているため、開発会社の権益分であっても販売価格を産油国の公式販売価格に合わせることが多い。また、課税にあたっても公式販売価格を課税標準額とするケースもあるため、開発会社が販売価格を独自に設定するとかえってリスクを負うことになってしまう。
      多くの中東産油国との契約においては、生産分与契約であっても、内容的にはサービス契約に近く、利益はほとんど税金でもっていかれるものの、量的確保の観点から条件面で譲歩している面もあるといわれている。

  1. 開発会社の事業リスクとリスク管理
      開発会社が抱える主な事業リスクは、探鉱・開発・生産の成否、埋蔵量の予測値からのずれ、災害・事故等のリスク、オペレーターとなった場合のマネージメントリスク、価格変動リスク、為替リスク、金利リスク、カントリーリスク、他のパートナーの義務不履行リスクなどがある。加えて、巨額投資となるため、回収までの期間が長期にわたることでこうしたリスクがより増幅されることになる。
    価格変動リスクについては、先物市場を通じて固定化を行う企業はほとんどない。この理由としては、価格変動リスク以外のリスクが極めて大きいこと、また、前述のとおり価格を固定化することで公式販売価格と乖離し、かえってリスクを負うことになる点などがある。このため、より多くの個別のプロジェクトには共同で参加するとともに、複数のプロジェクトに分散投資を行うことでリスク管理を行うというのが一般的な開発会社のビジネスモデルとなっている。

 

第2項 今日の原油生産

BP統計によると世界の原油生産量は、世界的な景気・減速と価格高騰を背景に2009年には日量約8,126.1万バレルに減少したが、2010年以降、回復傾向を示し、2012年には8,615.2万バレルとなった。内訳をみると、世界最大の産油国の一つであるサウジアラビアなどで構成されているOPECでは、日量3,740.5万バレルと世界の生産量の約40%を生産している。さらに、地域別では中東が2,827万バレルで約30%を占めている。
 ロシアでは、旧ソ連の資本財を継承して民営化された石油会社が誕生した。これらの企業は欧米の技術と資金により復興し、現在では日量1,064.3万バレルまで生産量を伸ばしている。
 現在、北海、西アフリカ、中南米、中央アジアなどの世界各地で、油田が発見・開発されているが、今後も世界需要は中東への依存度を高くせざるを得ない状況にあり、原油生産大国としての中東産油国の優位性はいまだ変わっていないといえる。

表3 世界の原油生産量の推移
1日あたり生産量(1,000bbl/d)
  2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 前年比 ゼンネンヒ リツ 2012 ネン シェア
                         
アメリカ 7,362 7,244 6,903 6,828 6,862 6,783 7,263 7,552 7,868 8,905 13.9% 9.6%
カナダ 3,003 3,080 3,041 3,208 3,290 3,207 3,202 3,332 3,526 3,741 6.8% 4.4%
メキシコ 3,795 3,830 3,766 3,689 3,479 3,165 2,978 2,959 2,940 2,911 -0.7% 3.5%
北米 ホクベイ ケイ 14,160 14,154 13,709 13,725 13,631 13,156 13,444 13,843 14,335 15,557 8.9% 17.5%
                         
アルゼンチン 900 868 839 838 813 772 743 722 687 664 -3.8% 0.8%
ブラジル 1,548 1,537 1,699 1,804 1,833 1,895 2,024 2,137 2,193 2,149 -2.0% 2.7%
コロンビア 541 528 526 529 531 588 671 786 915 944 3.2% 1.2%
エクアドル 420 528 534 538 513 507 488 488 501 505 0.8% 0.7%
ペルー 89 86 92 97 96 99 107 113 110 107 -3.0% 0.1%
トリニダード・トバゴ 175 165 181 193 166 174 153 148 140 121 -13.7% 0.1%
ベネズエラ 2,868 3,305 3,308 3,336 3,230 3,222 3,033 2,838 2,766 2,725 -1.5% 3.4%
その 中南米 チュウナンベイ 149 144 146 140 142 138 134 134 137 145 4.5% 0.2%
中南米 チュウナンベイ ケイ 6,691 7,161 7,325 7,474 7,324 7,395 7,353 7,367 7,449 7,359 -1.2% 9.2%
                         
アゼルバイジャン 308 309 445 646 856 895 1,014 1,023 919 872 -5.2% 1.1%
デンマーク 368 390 377 342 311 287 265 249 225 207 -8.0% 0.2%
イタリア 116 113 127 120 122 108 95 106 110 112 1.4% 0.1%
カザフスタン 1,111 1,283 1,330 1,403 1,453 1,526 1,664 1,740 1,758 1,728 -1.6% 2.0%
ノルウェー 3,264 3,180 2,961 2,772 2,551 2,466 2,351 2,137 2,040 1,916 -7.0% 2.1%
ルーマニア 124 120 114 105 100 99 94 90 89 86 -2.8% 0.1%
ロシア 8,602 9,335 9,598 9,818 10,044 9,950 10,139 10,365 10,510 10,643 1.2% 12.8%
トルクメニスタン 203 194 193 187 199 208 211 217 217 222 2.5% 0.3%
イギリス 2,288 2,056 1,838 1,662 1,663 1,568 1,480 1,357 1,114 967 -13.4% 1.1%
ウズベキスタン 151 138 115 114 104 102 95 78 77 68 -12.0% 0.1%
その 欧州 オウシュウ 495 482 454 445 442 420 409 394 394 390 -0.7% 0.5%
欧州 オウシュウ ・ユーラシア ケイ 17,029 17,600 17,551 17,615 17,843 17,630 17,817 17,755 17,451 17,211 -1.4% 20.3%
                         
イラン 4,002 4,201 4,184 4,260 4,303 4,396 4,249 4,356 4,358 3,680 -16.2% 4.2%
イラク 1,344 2,030 1,833 1,999 2,143 2,428 2,452 2,490 2,801 3,115 11.2% 3.7%
クウェート 2,370 2,523 2,668 2,737 2,663 2,786 2,511 2,536 2,880 3,127 8.9% 3.7%
オマーン 822 783 777 740 713 759 815 867 891 922 3.5% 1.1%
カタール 949 1,082 1,149 1,241 1,279 1,449 1,416 1,676 1,836 1,966 6.3% 2.0%
サウジアラビア 10,141 10,458 10,931 10,671 10,268 10,663 9,663 10,075 11,144 11,530 3.7% 13.3%
シリア 652 487 448 421 404 406 401 385 327 164 -49.9% 0.2%
U.A.E 2,722 2,836 2,922 3,099 3,001 3,026 2,723 2,895 3,319 3,380 1.6% 3.7%
イエメン 451 424 421 387 341 315 306 291 228 180 -21.4% 0.2%
その 中東 チュウトウ 48 48 185 182 190 188 192 192 203 206 1.3% 0.2%
中東 チュウトウ ケイ 23,501 24,873 25,518 25,736 25,304 26,415 24,728 25,763 27,988 28,270 0.9% 32.5%
                         
アルジェリア 1,826 1,921 1,990 1,979 1,992 1,969 1,774 1,698 1,684 1,667 -0.9% 1.8%
アンゴラ 870 1,103 1,404 1,421 1,684 1,901 1,804 1,863 1,726 1,784 3.4% 2.1%
チャド 共和 キョウワ コク 24 168 173 153 144 127 118 122 114 101 -11.3% 0.1%
コンゴ 共和 キョウワ コク 208 217 239 271 221 235 269 294 293 296 0.8% 0.4%
エジプト 750 701 672 704 698 715 730 725 727 728 0.1% 0.9%
赤道 セキドウ ギニア 266 351 358 342 350 347 307 274 252 283 13.4% 0.3%
ガボン 274 273 270 242 246 240 241 255 254 245 -3.5% 0.3%
リビア 1,485 1,623 1,745 1,816 1,820 1,820 1,652 1,659 479 1,509 215.1% 1.7%
ナイジェリア 2,233 2,430 2,502 2,392 2,265 2,113 2,211 2,523 2,460 2,417 -1.9% 2.8%
ミナミ スーダン - - - - - - - - - 31 - w
スーダン 265 301 305 331 468 480 475 465 453 82 -81.9% 0.1%
チュニジア 68 71 73 70 97 89 83 80 68 65 -4.7% 0.1%
その アフリカ 141 165 172 224 193 190 183 167 232 234 1.0% 0.3%
アフリカ ケイ 8,408 9,322 9,902 9,945 10,179 10,226 9,848 10,123 8,742 9,442 7.7% 10.9%
                         
オーストラリア 624 542 553 534 551 556 559 576 496 458 -8.6% 0.5%
ブルネイ 214 210 206 221 194 175 168 172 165 158 -4.3% 0.2%
中国 チュウゴク 3,406 3,486 3,642 3,711 3,742 3,814 3,805 4,077 4,074 4,155 2.0% 5.0%
インド 802 816 785 809 809 809 796 873 903 894 -0.9% 1.0%
インドネシア 1,176 1,130 1,096 1,018 972 1,006 994 1,003 952 918 -3.9% 1.1%
マレーシア 760 776 757 713 742 741 701 703 640 657 2.6% 0.7%
タイ 244 241 297 325 341 362 376 388 397 440 9.1% 0.4%
ベトナム 361 424 389 355 334 311 342 312 317 348 9.8% 0.4%
その アジア 太平洋 タイヘイヨウ 192 233 284 303 318 338 330 315 301 285 -4.9% 0.3%
アジア 太平洋 タイヘイヨウ ケイ 7,779 7,858 8,008 7,988 8,003 8,111 8,071 8,420 8,246 8,313 0.7% 9.6%
                         
世界 セカイ ケイ 77,568 80,968 82,014 82,482 82,285 82,932 81,261 83,272 84,210 86,152 2.2% 100.0%
OPEC ケイ 31,231 34,040 35,170 35,489 35,161 36,279 33,977 35,097 35,954 37,405 3.9% 43.2%
OPEC ケイ 35,808 35,515 35,010 34,676 34,321 33,830 34,015 34,617 34,648 35,088 1.2% 40.5%
キュウ ソビエト 連邦 レンポウ ケイ 10,530 11,414 11,835 12,318 12,803 12,824 13,269 13,558 13,609 13,659 0.4% 16.3%
EU ケイ 3,153 2,924 2,680 2,442 2,409 2,258 2,111 1,966 1,707 1,538 -9.9% 1.8%
OECD ケイ 21,165 20,766 19,870 19,452 19,147 18,461 18,496 18,560 18,607 19,495 4.9% 21.9%
(出所) BP「BP Statistical Review of World Energy 2013」
 注: (1) 生産量はcrude oil, shale oil, oil sands, NGLを含む(ただし、バイオマス、石炭由来の液化資源を除く)。
     (2) 四捨五入の関係で100%にならない場合がある。
 
第3項 原油生産の見通し

今後のエネルギーの需給見通しには、単なる商業・経済活動との連動に限らず、地球規模の観点における省エネルギー・脱化石燃料の側面が色濃く出てくることが予想される。このような状況にあっても、当面、液体で取り扱い易く比較的安価である石油資源が大きくシェアを落とす事態は発生しないと予想される。中東産油国の確認埋蔵量は圧倒的なため、石油需要増加の多くは中東産油国が供給を担うものと考えられる。

図2 世界の石油生産量の見通し(標準ケース)


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第4節 原油の国際取引

第1項 原油取引の単位
  1. 容積
     国際的な原油の取引は、「バレル(バーレル)」が用いられている。その由来は樽の英名Barrel で、米国での呼名が世界の標準となったといわれている。米国では石油製品の小売り単位は「ガロン」が用いられる。
      1バレル=約159リットル
      1バレル=42ガロン(米国)  1ガロン=約3.8リットル(米国)、約4.55リットル(英国)
      原油の輸送は、タンカーで行われているため、そのタンカーの一つの仕切りを基準とした単位として「カーゴ」が用いられる。このため、取引にあたってのロットは、現物取引では「カーゴ」を基準として50万バレル単位で行われている。また、OTC市場における現物の受渡しを伴わないペーパー取引でも50万バレルが基準となっている。
     ドバイ原油については、20分割した25,000バレルを単位として取引が行われ、50万バレル(±5% 許容)に達した段階で現物取引にも振替えられる「パーシャルドバイ」の取引が行われている。
      1カーゴ=50万バレル(許容範囲: 47.5~52.5万バレル=19~21パーシャル)  1パーシャル=25,000バレル
  2. 通貨
     原油や石油製品のほとんどの国際取引は、米ドル建てで決済されている。したがって、円建てに換算する場合には、為替レートの影響を受ける。
  3. 国内単位への換算
     国内単位は「円」建てで、「キロリットル」または「リットル」が用いられる。国際単位のバレルを国内単位に換算する場合は、1バレル=0.159キロリットルとする換算レートを用いる。
    為替レートが1ドルあたり100 円の場合、原油価格が1バレルあたり100ドルでは、
    100ドル/bbl×100円/ドル=10,000円/bblであるから、
    1キロリットルに換算すると、
    10,000円/bbl÷0.159kℓ/bbl=62,893円/kℓとなり、
    1リットル換算では約62.9円/ℓとなる。
    この前提から、原油価格と為替が変動すると以下のような影響がある。
    ・原油価格が1ドル変動する場合
     1ドル/bbl×100円/ドル÷159ℓ/bbl=0.629・・・約0.63円/ℓの影響
    ・為替レートが5 円変動する場合
     5円/ドル÷159ℓ/bbl×100ドル/bbl=3.144・・・約3.14円/ℓの影響
第2項 原油取引の種類
  1. 契約期間による分類
    (1)ターム契約
     ターム契約とは、数カ月から1年程度、毎月一定量の原油を購入する、現物の長期契約取引であり、日本における原油調達方法の大勢を占めている。長期契約であっても、契約時において取引量のみが決まっているだけで、契約価格は、政府公式販売価格(=OSP(Official Selling Price))をベースにし、船積み後に決まる後決め方式が主流である。
    また、ターム契約者に対しては、供給(産油者)側から時折、契約の追加的な売却のオファーがあることもある。この追加部分はインクリメンタルとよばれる。

    (2)スポット契約
     必要に応じてその都度手当てされる現物の契約取引をスポット契約という。通常、スポット原油とは、石油会社が産油国やメジャーから期間を決めて購入するターム原油以外を指す。中国の原油取引は、スポット契約の比率が高い。
  2. 契約当事者による分類
    (1)DD(Direct Deal) 産油国(または国営石油会社)と消費国におけるそれぞれの石油会社との間で直接取引される原油をDD原油という。DD原油はメジャーや商社、ブローカーを経由しないで直接調達するもので、日本における原油調達方法の大勢を占めるものである。

    (2)GG(Government to Government) 産油国と消費国の政府間で取引される原油をGG原油という。DD原油が単に産消国間の原油取引であるのに対し、GG原油は産油国の求める工業化、経済開発計画の推進への見返り、及び発展途上国援助のために行われるのが一般的である。こうした取引の性格上、GG原油は長期にわたって大量の取引が行われる傾向があり、石油危機などの供給不安定な時代には多く見受けられたが、現在はほとんど行われていない。
  3. 契約条件による分類
    (1)仕向地制約の有無
     多くの中東産原油は同じ油種であっても、仕向地によって異なる価格が設定されている。このような原油は、差別価格の維持を目的として仕向地の変更が規制されていることが多い。DD原油の多くはこれにあたる。
     一方、このような制限がなく、自由に仕向地を選択できる原油も存在する。アジア向けではドバイ原油とオマーン原油が代表的である。

    (2)契約価格
     中東産原油は、取引価格が契約時点で絶対値によって決定されるもの(契約時点で取引価格が決まっているため絶対価格あるいは固定価格と呼ばれる。)と政府公式販売価格(OSP)などにより契約後に決定されるもの(契約時点では取引価格が決まっておらず事後的に決定されるため、変動価格と呼ばれる。)の二通りがある。
     下表のとおり、中東産原油の中でもドバイ原油は仕向地制約がなく、且つ契約時点で価格を決めて自由に取引ができるため、スポット取引によりスポット価格が形成される。そしてそれが指標となり、他の中東産原油がドバイ原油に連動して価格が事後的に決定される仕組みになっている。
    表4 契約条件による原油の分類例
      仕向地制約なし 仕向地制約あり
    絶対(固定)価格の取引が可能(*) ドバイ、オマーン
    変動価格の取引のみ オマーン、カタールなど サウジアラビア、クウェート、イランなど
    *ドバイ原油とオマーン原油について長期契約(スポット取引以外)の取引については、他の中東産原油と同様にスポット 価格をもとにした変動価格が適用される。

     

    (3)開発原油
     石油操業会社への事業参加による石油利権のシェアに応じた取り分の原油をエクイティ原油という。本来、エクイティ原油は、その開発事業費などから割出した開発会社独自の販売価格の設定がなされてしかるべきであるが、実際には、産油国が決めた当該原油の公式販売価格にならって価格が設定されている。
     この背景には、あえて開発会社が別の価格を設定すると、エクイティ原油の分与計算や課税計算において公式価格が基準となっているため、産油国の公式販売価格との差によってリスクが生じる、といった事情がある。

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第5節 地球温暖化と石油

第1項 温暖化を巡る国際的な動向

近年、地球温暖化が大きくクローズアップされるようになってきた。地球温暖化は化石燃料の燃焼に伴う二酸化炭素による影響が最も大きいと考えられており、このため地球温暖化問題とエネルギー問題は表裏一体の関係になってきたといわれている。
 こうした中、国際的な温暖化防止の取り組みとして、2005年に京都議定書が発効した。京都議定書では、温室効果ガスの排出量を2008年からの5年間において、先進国全体で1990年比5%削減するため、各国に目標(日本はマイナス6%)が設定されている。ただ、最大の排出国である米国が参加していないことや中国(排出量世界第2位)、インド(同第5位)、韓国(同第10位)等の大排出国を含む発展途上国には削減義務がないことから、削減義務を負っているのは世界の総排出量のわずか3割を排出している国に限られていること、さらに削減義務を負っている旧ソ連(ロシアは同第3位)や、東欧諸国では、90年以降、社会主義経済の崩壊で、経済活動が90年比で低迷したことから、排出量が大幅に減少しており、相当の余剰分(ホットエア)が発生していることなどから、効果に限界があるといわれていた。現在は、京都議定書「第1約束期間(2008年~2012年)」が終了し、「第二約束期間(2013年~2020年)」がスタートしているが、第一約束期間における目標達成状況については、各国の2012年の排出量が確定する2015年以降に明らかになる見通しである。
  京都議定書の第二約束期間については、日本を含む主要排出国が参加しておらず、排出削減義務を負っているのはEUやオーストラリア等のみで、世界のCO2排出量の15%しかカバーしていないといわれている。このため、すべての国が参加する将来枠組みの構築が重要な課題となっており、気候変動枠組み条約締約国会合(COP)において、2015年までの交渉妥結を目指して議論が進められている。
  なお、第二約束期間における京都議定書不参加国は、海外クレジット等の国際取引が認められないことになっており、日本はアジア諸国を中心に二国間オフセット・クレジット制度の構築に向けた政府間協議を開始している。日本は2009年11月のCOP15会合において、2020年までに前提条件付きで1990年比25%削減という目標を登録したものの、東日本大震災を受けて、2012年3月に国連に対して当該目標の見直しを表明している。今後の国内の排出削減については、経団連の「低炭素社会実行計画」に基づく自主的な排出削減に向けた取り組みが中心となる見込みであるため、当面、義務的な削減を前提とした国内排出量取引制度が構築される見通しは極めて不透明となっている。

   

第2項 バイオエネルギーと石油

地球温暖化を含めた環境意識の高まりから、化石燃料の代替エネルギーとして、再生可能エネルギーに注目が集まるようになってきた。主な再生可能エネルギーとしては太陽エネルギー、水力、風力、地熱、バイオマス、海洋エネルギーなどがある。このうち、自動車燃料として石油と関係が深いのはバイオエタノールやバイオディーゼルなどである。バイオエタノールとは、サトウキビやトウモロコシなどのバイオマスを発酵させ、蒸留して生産されるエタノールを指す。また、バイオディーゼルとはバイオディーゼル燃料の略で、菜種油、パーム油、大豆油、コメ油などの植物油や、魚油や牛脂及び廃食用油などの生物由来油から作られるディーゼルエンジン用燃料の総称である。わが国においては、2002年に閣議決定された「バイオマス・ニッポン統合戦略」が2006年に見直され、大幅なバイオマス・エネルギー導入の方針が示された。現在、世界各国でもバイオ燃料の利用拡大に向けての取り組みが本格化しつつあるが、技術面やコスト面だけでなく、食料との競合や耕作地開墾による環境破壊など解決しなければならない課題もまだ多くあり、わが国でも試験的な取り組みが始まったところである。

第3項 排出量取引

排出量取引は、予め設定された排出削減目標を達成するため、排出主体が排出量を売買する制度である。米国では、1970年代以降、環境保護庁が各種の取引制度を運用してきているが、1997年、京都議定書において、温室効果ガス削減をより柔軟に行うための経済的メカニズム(京都メカニズム)の一つと定められてから、急速にその概念が世界に普及することとなった。
 さらに2005年には、京都議定書の発効とともに、欧州において、議定書の削減目標達成のためにキャップ・アンド・トレード(※6)型の欧州域内排出量取引制度(EU-ETS: EU Emissions Trading Scheme)が運用開始され、これ以降、欧州ではOTC市場の拡大とともに、商品取引所において排出量の上場が相次ぐこととなった。
 ここで排出量取引の基本概念を簡単に説明する。まず、年間100トンの排出削減を義務付けられたA国とB国があるとする(下図参照)。両国のうち、排出量を1単位削減するのにかかる費用(限界削減費用)は、A国では10ドル/トンであり、B国では1ドル/トンであるとする。この場合、100トンの排出削減を実現するのにかかる総費用は、A国では1,000ドル、B国では100ドルとなる。
 このとき、全体で200トンの削減目標を達成するためにかかる総費用は、A、B両国が100トンずつ削減すると、1,100ドルとなる。一方、B国が200トン削減し、A国はB国から余剰削減量の100トンを排出量取引によって購入することとすると、全体の削減費用は200ドルとなる。したがって、全体で200トンの排出削減を達成するのにかかる費用は、排出量取引を実施した場合は、実施しない場合に比べて900ドル安くなる(実際には、B国は排出量の売値を、1~10ドル/トンの範囲で、A国の削減費用よりは安く、かつ自国の利益を最大化するように設定するはずである。)このように、市場メカニズムを利用して効率的に排出削減を実現できる制度として、排出量取引は欧州を中心に世界各国で導入が進められてきた。
  一方、日本では2008年より国内クレジット制度、オフセット・クレジット制度が開始され、2013年度よりこれらが統合してJ-クレジット制度がスタートしているが、自主的な取り組みであるため、義務付け制度の下、取引に対するインセンティブが明確なEUのように取引所市場における活発な取引は見込まれていない。
  また、EUにおいても、京都議定書の第二約束期間においては、欧州債務危機等を背景とする企業活動の低迷を受けて排出枠に余剰が生じていることなどから価格の下落が著しく、2013年は3~5ユーロ/t-CO2程度(10月までの実績)となっており、一部には市場の機能不全を懸念する声もある。EUにおいては、2005年に設立された欧州気候取引所(European Climate Exchange, ECX)が欧州排出枠の取引を開始しており、現在は2010年にECXを買収したICE傘下のICE Futures Europeにおいて取引が行われている。NYSE Euronext傘下のBlueNextにおいても、一時、欧州排出枠の取引が活発に行われていたが、取引の低迷を受けて2012年12月に取引を停止した。
  排出量取引は、環境負荷低減のために市場メカニズムを利用する合理的な制度であるが、EUの事例等は、効果的な制度運用のためには課題も多いことを示唆している。


※6. 排出量取引にはキャップアンドトレードと、ベースラインクレジットという2つの方式がある。キャップアンドトレードは、総量規制を前提に、その規制目標を過達した主体と未達の主体との間で排出量の余剰枠の売買を認める制度である。ベースラインクレジットとは、温室効果ガスの排出削減プロジェクトを実施し、その削減量を排出枠のクレジットとして認定し、このクレジットを取引する制度である。

排出量取引なし/排出量取引あり:図

 

第6節 シェール革命


 シェール革命あるいはシェールガス革命とは、今まで開発が困難とされてきたシェール(頁岩)層に含まれる非在来型の石油や天然ガスの採掘が可能となったことにより、世界的なエネルギーの需給構造に変化がもたらされることとなったことをさす。
  2000年代になってシェールガス開発が米国で急速に進み、2009年には米国がロシアを抜き世界最大の天然ガス生産国となった。これにより、米国内の需要が満たされ、天然ガス価格が下落した。このため、これまで対米向けに輸出されていた中東産の天然ガスが欧州に流れ、そのあおりをうけたロシアは新たな輸出先をアジアに求めることとなる。
  今後、米国から天然ガスの輸出が開始されることになり、原油連動でLNG価格が決定しているアジア市場のLNGの独歩高の是正につながることが期待されている。



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