検定試験テキスト −石油取引の基礎知識−

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第2章 石油製品の基礎知識

第1節 石油製品

第1項 種類

ガソリンや灯油に代表される石油製品は、製品として輸入されている一部を除き、その多くは中東などから輸入した原油を精製することによって生産される。石油製品はこの精製過程で同時に生産されることから、「連産品」の特徴を有している。
このうちガソリン、灯油及び軽油は、無色透明かそれに近い色であることから「白油」といわれ、また、重油などは「黒油」とよばれている。灯油、軽油及びA重油については、「中間三品」ともよばれている。

第2項 規格

日本の石油製品の規格として、生産段階におけるJIS規格(日本工業規格)がある。東京商品取引所の標準品としては、ガソリンはJIS・K2202の2号(レギュラーガソリン)、灯油はJIS・K2203の1号(民生用灯油)が規定されている。
 一方、流通段階の規格には、揮発油等の品質の確保等に関する法律(品確法)に基づく流通規格がある。
品確法は、1995年4月に制定され、翌年4月より施行された。その目的は、特定石油製品輸入暫定措置法(特石法)が廃止されたことを受けて、国内で多様な石油製品が流通する可能性があることから、石油製品の品質維持について明確な規定を設けるためにある。同法では、石油製品の品質を環境、安全及び性能の3要素に分類して基準を定めている。
 まず、環境と安全の項目については、強制的な規格項目(強制規格)が設けられ、国内でこの規格を満たさない石油製品は流通が禁止されている。日本に輸入される石油製品は、通関段階で強制規格を満たしているかどうかの検査が行われ、その基準を満たさない石油製品は通関が認められないことになっている。
 性能については、基本的には強制項目が設けられていないが、消費者の選択に委ねられ、標準的な品質としてJIS規格に準拠する標準規格が定められている。販売業者は標準規格を満たしている場合、店頭にSQマーク(スタンダード・クオリティー・マーク)を表示することができる。消費者はこのSQマークの有無を確認しながら石油製品を購入できる仕組みになっている。

SQ マーク
表1 品質確保法で定められている石油製品の規格
表1 品質確保法で定められている石油製品の規格
第3項 精製
  1. 常圧蒸留
     原油の精製過程では、まず原油に含まれる泥、水分、塩分などの不純物が分離され、その後、加熱炉で330〜350℃に加熱され、常圧蒸留装置の精留塔(トッパー)とよばれる塔の下部に送り込まれる。精留塔はほぼ常圧に保たれており、加熱炉より圧力が低く、上部にいくほど低温になっているため、沸点が低く軽い成分が上に、沸点が高く重い成分が下に分離されていく。この過程を蒸留といい、その成分を留分という。
     品種別では、精留塔の最上部で石油ガス(LPG)留分が、その下のトレイでナフサ留分とガソリン留分、灯油留分、軽油留分などが順次取り出され、この過程を経て、最も重い重油やアスファルトなどが残油(残渣)として残る。
     このような常圧蒸留装置の原油処理能力は、製油所の生産能力の大きさを図る目安となっている。
  2. 二次精製
     石油製品の製造方法のうち、常圧蒸留によって物理的に仕分けるのを一次精製というのに対し、化学的に分解・改質する工程によって、残油から石油製品を得たり、性状の調整を行ったりする仕組みを二次精製という。これらの工程で原油はほぼ100%製品化される。
     二次精製の具体的な例としては、冬季の需要に合わせた灯油の得率アップなどのシーズン調整や、白油化が進む需要構造の変化に対応する得率調整などが挙げられる。
     その他には、低オクタン価のナフサを高オクタン価のガソリンに転換させる改質も行われる。ハイオクガソリンは、この改質を利用して生産することができる。
図1 原油精製プロセス
図1 原油精製プロセス
図2 原油処理能力と稼働率の推移


第4項 元売

第二次世界大戦後、国内での石油精製が再開された際に、精製設備ないしは輸入基地を持ち、製品の配給能力を有すると認められた事業者は「登録元売業者」に指定された。現在では、石油製品の一次卸事業者を指す総称となっているが、一般的には元売会社は原油探鉱開発会社、タンカー会社、精製会社、物流会社を資本支配下においており、メーカー機能までをも総称して「元売」ということが多いようである。
 現在、国内の元売としては、JX日鉱日石エネルギー、昭和シェル石油、出光興産、コスモ石油、太陽石油、三井石油、東燃ゼネラルグループ(東燃ゼネラル石油及びEMGマーケティング)が挙げられる。東燃ゼネラルグループは、旧エクソンモービルジャパングループが2012年6月1日に東燃ゼネラル石油鰍中心とした新体制に移行したもので、エクソンモービル(有)は同年5月に社名変更し、EMGマーケティング(同)となった。 
  なお、コスモ石油は2007年9月にアブダビ首長国の政府投資機関の国際石油投資会社(IPIC)が筆頭株主となった。
 最近では大手元売間での業務提携が相次いでおり、2000年7月までに新日本石油とコスモ石油、昭和シェル石油とジャパンエナジー、エクソンモービル・東燃ゼネラル石油、出光興産の「元売4極体制」が出来上がり、2002年12月に新日本石油と出光興産が物流部門に続いて精製部門提携を発表し、実質的に「元売3極体制」の時代を迎えている。
 また、2008年には新日本石油が九州石油を経営統合し、2009年10月末には新日鉱ホールディングス(株)(ジャパンエナジーの持株会社)と経営統合し、統合後の持株会社であるJXホールディングスが発足した。
  このような元売の再編に伴い、わが国における石油精製能力は減少傾向にあり、2013年3月末現在では約447万バレル/日と、過去13年間で約88万バレル/日(約16%)削減された。また、石油精製会社は、非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効利用の促進を目的として制定されたエネルギー供給構造高度化法(2009年8月施行)による生産設備の見直しも求められており、2014年3月末の期限までに製油所の閉鎖等により約55万バレル/日の削減が予定されている。

図3 石油元売各社再編の流れ(2013年3月現在)


第5項 物流
  1. 物流手段
     石油製品は、内航タンカー(バージ)、タンクローリー、パイプライン、タンク車(鉄道)などの物流手段によって搬送される。
  2. 供給経路
     石油製品がSS(サービス・ステーション)に供給される経路は大きく二つに分類される。
     一つは、元売が製油所または輸入基地(一次基地)から、直接、タンクローリーによってSSに届ける持ち届けである。
     もう一つは、SSを経営する特約店、販売店が契約するタンクローリーにより、一次基地もしくは油槽所(二次基地)に出向いて引き取る倉取り(ex-pipe)で、系列外取引(第6項 販売 参照)では後者が主流となっている。

  3. 物流の変遷
     石油業界においても、物流コストの削減は重要な課題である。このため、最近では二次基地を経由せずに、一次基地から直接タンクローリーで搬送するケースが増加している。その背景には、高速道路網の発達や、消防法の緩和によるタンクローリーの大型化、他の元売との業務提携による物流の相互乗り入れ(ジョイント・バーター)の増加などが挙げられる。
     ジョイントとは、元売の系列出荷基地に、他の元売の乗り入れを許容することをいう。バーターとは、例えば京浜地区で元売A社が自社製品をB社に供給する一方で、阪神地区でB社が同量の自社製品をA社に供給する製品の交換・相互融通の契約形態のことをいう。

図4 主な物流経路
図4 主な物流経路
第6項 販売

石油製品の販売は、産業用と民生用で大きく異なる。産業用で代表的なのが、製油所に隣接する工業地帯へパイプラインによって供給する形態であり、電力用のC重油(または原油)や石油化学用のナフサが該当する。これらの他、製紙工場や航空会社などの需要家向けなどに対しても、元売が直接販売するケースが多く、この販売形態をインタンク直売方式とよぶ。
 一方、民生用の石油製品取引は、かつては系列取引に対し、系列外取引あるいは業転取引と区分されることもあったが、これらの用語の定義が不明確であることに加え、流通形態が多様化してきたことにより、明確な区分が難しくなっている。一般に石油元売会社との特約店契約に基づき、元売ブランドにより販売するものを系列取引という一方で、以前は特約店契約によらない取引を系列外取引と呼んでいたが、現在では特約店契約に基づき、商社など、独自ブランドで販売する業者も現れたため、このような区分があてはまらなくなってきている。
 スポット取引が行われる背景には、連産品という石油製品の商品特性が挙げられる。季節や需給動向によっては、ガソリン、灯油及び重油などの製品ごとに過不足が生じることがある。これらの需給ギャップを補完するために、元売や販売業者はバーター取引やスポット取引を行っている。

第7項 取引単位

元売から特約店向けの取引単位は、通常「キロリットル=kℓ=1,000 リットル」が容積単位として用いられる。
 小売り単位は「リットル=ℓ」であるが、灯油の場合は灯油缶の容積が1缶「18リットル」であったことから、「18リットル」単位で取引されることが多く見受けられる。
 同様に、潤滑油のうち自動車用のモーターオイルは「4リットル」の荷姿で販売されることが多くあるが、これは米国の「1ガロン」を国内単位に近づけたものとされている。大口の潤滑油はドラム缶で取引されることもあるが、ドラム缶の1缶は「200リットル」で、これも米国の「1バレル」を国内単位に近づけたものとされている。
 例外的に、石油化学原料のナフサなどは「トン」の重量単位、石油ガス(=LPG)は「立方メートル」の容積単位が用いられる。

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第2節 ガソリン

第1項 製品特性

ガソリンは常温常圧の状態で蒸発しやすく「揮発油」ともいう。もともと無色透明の液体であるが、常温常圧で爆発的に燃焼するという、危険性が非常に高い性状を持っているために「オレンジ色」に着色されて、容易に灯油との見分けができるようにされている。
 その99%以上はガソリン車用に消費されているが、小型の航空機用や溶剤用、ドライクリーニング用、塗料用にも使われている。
 自動車用のガソリンにはレギュラー(並揮)、オクタン価の高いハイオク(高揮)の2種類のガソリンがある。オクタン価とは、走行中のノッキング現象を起こしにくくすることを示すアンチノック性指数のことで、数値が大きいほど、アンチノック性が高くなる。オクタン価規格は、それぞれレギュラーが89.0以上、ハイオクが96.0以上である。通常、SSで販売されているハイオクガソリンのオクタン価は100である。ハイオクガソリンのことを、エンジン清浄剤などの添加剤に工夫を加えた「プレミアムガソリン」とよぶところもある。
 また、環境規制に対応するためにベンゼンや硫黄分の低減化が進められており、製油所におけるベンゼン抽出装置や脱硫装置導入が進んでいる。硫黄については、2008年より10ppm以下への更なる品質規制強化が実施されたが、石油連盟に加盟している石油精製・元売会社では、この規制に先駆け2005年1月より自主的にこれに対応した製品(サルファーフリーガソリン、10ppm以下)の供給を開始した。サルファーフリー化により酸性雨の原因となる硫黄分を除去することで、自動車排ガスのクリーン化に効果を発揮するとともに、燃費の向上に伴うCO2削減による温暖化対策につながるものと期待されている。

第2項 流通経路と販路

ガソリンの流通経路は、複雑多岐な灯油とは異なり、大部分が元売から特約店を経由してSSで販売されている。この背景には、ガソリンの商品特性を考慮した規制が挙げられる。ガソリンは引火点が低く危険性が高いことから、販売業者は、消防庁の定めた基準に適合し、経済産業大臣に登録した業者に限定されている。
 また、販売経路の形態は、元売の直売、一般特約店、商社系特約店、全農経由などがあるが、一般特約店が代表的である。
 SSは特約店から仕入れて販売している業者もあるが、ガソリン販売量の過半数は特約店を経由しており、その比率は年々高まっている。また、ほとんどのSSは元売の系列に属し、店頭に元売の商標(ブランド)の入ったサインポールを掲げている。このサインポールを掲げていないSSもあるが、これを無印SSという。最近では、自社のブランド(プライベート・ブランド)を掲げたSSも増加傾向にある。
 SSの開設は揮発油販売業法に基づき、長い間、新設枠、距離規制及び登録制がとられていたが、1998年1月には、新規のSS建設を規制した指定地区制度が廃止され、一定の設備要件さえ備えれば、自由に新設ができるようになった。さらに、同年4月には消防法が改正され、ユーザーが直接給油するセルフ給油方式が解禁となり、飛躍的に増加する傾向が見られる。
 このほか、大手スーパー、ディスカウントストア、カー用品店などの異業種がSSを併設したり、全農、商社などがプライベート・ブランドで事業展開を図ったりする動きもあり、価格競争が激化している。

第3項 価格の特徴

日本は政策上、ガソリン価格を国際価格より割高に誘導してきた。ガソリンが「唯一の採算油種」といわれ、そのため元売各社はガソリン販売力の増強を競ってきた。
 販売力の増強は、系列SSの拠点数の増加によって図られるため、元売各社はこぞって系列SS網を増強した結果、1994年のピーク時には6万カ所を超えた。その後規制が緩和されて再編が進み、資源エネルギー庁によると2012年度末時点で36,349カ所にまで減少している。近年はエコカーの普及や若者の車離れによる需要減少のほか、2013年1月末に改正消防法で義務付けられた交換・改修期限が到来した古いタンクの改修費の負担などがSS数の減少に影響しているものとみられるが、依然として欧米と比較してSSの数は過剰気味であるとされている。
 過剰な販売力は、過当競争につながり、規制緩和以降、ガソリン価格は大幅に値下がりした。今日でも競争の程度によって小売価格は地域によって大きく異なる。例えば、関東地方においては、栃木、群馬、茨城、千葉、埼玉が販売激戦区となっており、これらの地域は全国的に見て安い傾向にある。
 ガソリンの業転取引が活発であるといわれる愛知県を中心とする中京地域では、業転価格が小売価格に大きな影響を与えているともいわれている。
 ガソリン価格は、原油価格、為替、需給、販売政策動向などが組み合わされて形成されるが、SSの立地密度、大規模店やセルフ店の動向、異業種SSの価格動向などの立地環境が市況形成に影響を与えている。最近ではセルフ店の割安販売が市況形成に大きな影響を与えているといわれている。セルフ店は通常のSSと比較して2倍〜数倍の販売ボリュームがあるといわれ、2012年度末時点で8,862カ所となっており、増加の傾向にある。

第4項 税制
  1. ガソリン税
     従量税で道路目的税である揮発油税と、地方揮発油税(2009年度以降、地方道路税から名称変更。)を併せた国の税金を総称してガソリン税とよぶ。ガソリン税は数次にわたって引き上げられ、1キロリットルあたり5万3,800円と石油諸税の中では最高額であり、公道を走行する自動車燃料用のガソリンに蔵出し課税される。2013年度予算では約2兆8,416億円で、所得税、法人税、消費税に次いで、国税収入の税目別で第4位の6.1%を占めている。
     なお、ガソリン税の基本税率は1リットルあたり28.7円であるが、1974年度以降、租税特別措置法による暫定税率が適用され、25.1円上乗せされている。暫定税率はこれまで、ほぼ5年ごとに見直しが行われ、適用期間が延長されてきたが、2008年3月末の見直しにおいて延長法案の成立が遅れたため、4月1日から30日まで暫定税率が失効し、この間一時的にSS間の値下げ競争が激化した。なお、2010年4月以降、新法律によって暫定税率の施行方法が変更されたが、軽油とともに第5節に別記する。
  2. 一般消費税
    ガソリンに対する一般消費税は、ガソリン税を含んだ全体価格に課税される。二重課税となっているため石油業界からは見直しを求める要望が強い。ガソリン税1リットル53.8円、本体価格が82.2円として、小売価格136円の場合は、消費税5%で税込価格は1リットル142.8円となる。

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第3節 灯油

第1項 製品特性

灯油は、無色透明の液体であり、主に暖房用に使用される。国内の家庭暖房用の灯油は、「白灯油」に区分され、硫黄分80ppm以下という匂いの少ない優れた燃焼性を有し、世界でも最高の品質とされている。家庭向けの白灯油は「民灯」とよばれることもある。
 その他、精製度の低い「茶灯油」もあり、こちらは産業用の溶剤や発動機の燃料として使われてい たが、現在は流通していない。灯油は軽油と性状が近いために、A重油と共に軽油引取税の脱税を防止する観点から識別剤「クマリン」が添加されている。
 また、灯油はKHP(Kerosene Heat Pump: 灯油エアコン)やコージェネレーションの燃料など、通年商品としての利用拡大が期待されている。

第2項 流通経路と販路

灯油は、家庭などの暖房用を中心とした民生用需要が全体の約6割を占めている。灯油の流通構造は他の石油製品とは異なり、少量、小分け販売体制が重視され、複雑多岐にわたっていることが特徴である。
 具体的には、卸段階では一般石油特約店のほかに薪炭・米穀系の燃料卸商特約店などがあり、小売段階でもSSの他、燃料小売商、米穀店、ホームセンター、農協、生協などが販売し、販路は多種多様である。ミニ・ローリーによる移動販売が消防法で認められていることも、販売チャンネルが多様化している要因である。
 一方、産業用は元売による直売の他、特約店や燃料商を経由して販売されているが、数量は特約店経由が圧倒的に多くなっている。

第3項 価格の特徴

灯油は暖房用の需要が高いため、冬場の需要期には価格が上昇する傾向にあり、他の石油製品価格とは異なり、季節変動が大きい点が特徴である。灯油価格は、石油危機時に原油の高騰が家計を直撃しないよう政策的な価格誘導が行われた結果、ガソリンと比較して割安となり、特殊な税金も課税されなかった。
 需要期の灯油価格は、札幌市民生協や青森県民生協などの大需要地域の生協と元売との交渉で決められる価格(生協価格)がシーズン当初の指標となっている。生協価格は、秋口に決められるものの、その後、需給状況に応じて価格が変更される方式となっている。しかし、近年ではホームセンターが元売と独自に価格交渉を進めるようになるなど、生協価格の指標性は薄れている。
 小売では1リットル単位もあるが、かつて一斗缶単位(18リットル)で取引されていた名残により、18リットル単位で販売されるケースも多く見られる。

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第4節 軽油

第1項 製品特性

軽油は、わが国では主としてディーゼルエンジンの燃料として使用され、約95%がディーゼル燃 料として消費されている。ディーゼルエンジンは高出力で熱効率が良く、荷重の重いバスやトラックに向いており、かつてはガソリンよりも税金が安いことで、自家用車でも搭載車両が増える傾向があった。
 品質規格(JIS規格)は、凍結温度の違いによって5種類に分類されており、北日本や高地などには「寒冷地仕様」の軽油が出荷されるように、地域と季節に適合した製品が供給されている。また環境規制に対応するため、低硫黄化が1992年より段階的に進められており、現在の規制値10ppm(サルファーフリー軽油、10ppm以下)のサルファーフリー化により、自動車排ガスのクリーン化に効果を発揮するとともに、燃費の向上に伴うCO2削減による温暖化対策につながるものと期待されている。また、エンジン性能にパワーを発揮するセタン価のみならず、エンジン清浄効果も高めた軽油版のハイオクとよばれる「プレミアム軽油」を商品化している元売もある。

第2項 流通経路と販路

軽油の販売形態でいう「元売」とは、地方税法上の呼称であって他の石油製品と異なる。精製専業者や商社、特定の大手販売業者、全農などが「軽油元売」と位置付けられ、2013年4月現在、軽油元売は26社が指定を受けている(表2参照)。
 トラック物流大手事業者などに対する販売は、「軽油元売」が直売を行うケースが多く見られる。
 地域トラック事業者に対する供給は地場の有力な特約店や商社系が行うことが多く、この2形態を総称して、「インタンク」販売という。インタンク販売は元売などの販売者の油槽所から、使用者の軽油タンクへローリーによってダイレクトに納品する形態である。
 一方、トラック物流への供給拠点としての地域限定SS網を全国へと拡大展開したSS事業者を、フリート業者または広域事業者といい、こうしたSSからトラック事業者へ供給する形態を「フリート」という。これに対して、RV車両など個人客へのSS給油販売は「一般店頭」といい、上記の形態と区別される。

表2 軽油元売一覧
製造元売(11社) 出光興産、極東石油工業、コスモ石油、JX日鉱日石エネルギー、昭和シェル石油、
西部石油、東燃ゼネラル石油、太陽石油、南西石油、富士石油、大阪国際石油精製
販売元売(11社) キグナス石油、富士興産、EMGマーケティング、伊藤忠エネクス、丸紅エネルギー、
三井石油、カメイ、三菱商事石油、全農、全漁連、三愛石油
輸入元売(4社) 中川物産、双日、住友商事、三菱商事、トーヨーエナジー

                            (2013年4月現在、官報公示等をもとに東京商品取引所作成)

第3項 価格の特徴

軽油の販売価格は、俗に「3階建て」と称され、それらは「インタンク」、「フリート」、「一般店頭」である。前者ほど割安に、後者ほど割高に設定されている。
 「インタンク」価格は、大手トラック物流会社と元売との決定価格が指標となるケースが多く、地域のトラック組合がこれを参考に値決めを行う。公営交通や清掃局などの官公需では、競争入札形態が多くなってきている。
 「フリート」は一般的にカード給油となり、インタンク価格に準じてやや割高に設定されている。
 「一般店頭」は、ガソリン価格と同様にSSの競争条件によって決まるが、ガソリンと比較して過激な競争はあまり見られないようである。

第4項 税制

自動車などの燃料として道路上で使用された軽油には、「軽油引取税」が課税されている。軽油引取税は、1956年に地方道路整備財源として創設された地方税で、公道を走行する自動車燃料用の軽油に課税される従量税であるが、2009年度税制改正において道路特定財源制度が廃止されたことにより一般財源化され、従来の目的税から普通税に移行された。
 通常は用途課税の性格上、製造段階ではなく、特別徴収義務者である元売業者あるいは特約業者が、販売または卸売りした段階で課税され、 当該軽油の納入地(石油製品の販売業者が軽油の引取りを行う場合にあっては、販売業者の当該納入に係る事業所)所在の都道府県に納税する。燃料として性状の近い灯油やA重油などの炭化水素油が自動車燃料として使用された場合や、軽油に混入使用された場合にも、見なし課税がされる。基本税率は1964年以降、1キロリットル当たり1 万5,000円であり、暫定税率として1万7,100円が上乗せされている。なお、暫定税率は、ガソリンと同様に2008年3月31日に期限切れにより失効したものの、2008年5月1日から2018年3月31日まで再度適用されている。
 一般消費税の扱いについては、石油業者の取引形態によって異なる。このことは、軽油引取税が、国税で蔵出し税であるガソリン税と異なって、地方税であることに起因する。
 元売及び特約業者段階からの小売価格には、軽油引取税を除く本体価格にのみ消費税が課税される。一方、特約業者などから、軽油引取税課税済みの軽油を購入する事業者には、軽油引取税を含んだ全体価格に消費税が課税される。この方法で軽油引取税にかかる消費税が非課税となるには、供給元である元売または特約業者と委託販売方式という契約を締結することが必要となる。なお、2010年4月以降、新法律によって暫定税率の施行方法が変更されたが、ガソリンとともに第5節に別記する。

図5 軽油引取税の納税
図4 軽油引取税の納税

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第5節 ガソリン・軽油の暫定税率の取り扱いについて

第1項 暫定税率の停止内容

2010年4月より新たな法律(ガソリンは所得税法等の一部を改正する法律、軽油は地方税等の一部を改正する法律)により、暫定税率の部分をトリガー条件により課したり、課さなかったりと柔軟に対応することになった。
  なお、本トリガー制度は、東日本大震災の発生を受けて、2011年4月、政府によって凍結が決定された。制度が発動されれば少なくとも約4,500億円の税収減になるといわれており、制度を凍結して震災復興の財源確保を優先したもので、凍結期間については、「東日本大震災の復旧及び復興の状況等を勘案し別に法律で定める日までの間」とされており、明確にはされていない。

  ガソリン 軽油
根拠法 所得税法等の一部を改正する法律
(2010年4月1日施行)
地方税法等の一部を改正する法律
(2010年4月1日施行)
本則税率 28.7円/リットル 15円/リットル
暫定税率
(停止部分)
25.1円/リットル 17.1円/リットル
合計 53.8円/リットル 32.1円/リットル

 

第2項 トリガー条件

以下が条件となるが、ガソリン税は国税であるため財務大臣、軽油引取税は地方税であるため総務大臣がそれぞれ告示することになっている。また、注意すべきは、軽油もガソリン価格の値動きが条件となっていることである。

第3項 暫定税率の発動・解除のイメージ

(例)4〜6月のガソリン価格が上記トリガー条件となった場合

トリガー条件発動時・解除時のガソリンの小売価格のイメージ


 
  ※7. 軽油についても上記と同じイメージであるが、軽油暫定税率の発動・解除の告示は総務大臣が行う。

 

 

第6節 その他の石油製品・新エネルギー・石油代替エネルギー

第1項 石油ガス

石油ガスは、原油の精製工程において、最も軽い気体として回収され、LPG(液化石油ガス)として利用される。LPGはプロパンガスまたはブタンガスとして広く普及し、家庭用燃料やタクシーの燃料としても利用される。
 LPGには1キログラムあたり17.5円(1キロリットルあたり9,800円)の石油ガス税が課税される。

第2項 A重油

A重油は、重油の中でも軽油に近い性状で、硫黄分の低いLSA(Low Sulfur A = 硫黄分0.1%以下)と、 硫黄分の高いHSA (High Sulfur A = 硫黄分0.1%超(※8))の2種類に大別される。その多くは農耕機や漁業用の中小型船舶の燃料として使用されるほか、工場やビル、ビニールハウスのボイラー・暖房などにも使用される。
 また、軽油と性状が似ているため、識別剤「クマリン」が添加される。

  ※8. HSAで一般に流通しているものは硫黄分1.0%以下である。

第3項 C重油

C重油は、船舶などの大型のディーゼルエンジン用、火力発電や大型タービン船のボイラー用、または製鋼所の加熱炉用の燃料などに使用される重油で、硫黄分の低いLSC(Low Sulfur =硫黄分0.5%以下)と硫黄分の高いHSC(High Sulfur =硫黄分0.5%超)の2種類に大別される。
 かつては、火力発電用の需要などで石油製品の中でも圧倒的に大きな需要量を誇ったが、電力会社の原子力シフトと火力発電での天然ガス利用の促進などで脱石油が進み、近年、需要は減退傾向にあった。しかし、2011年3月に発生した東日本大震災以降、C重油の需要が高まっており、需要の減退傾向には歯止めがかかっている。

第4項 ジェット燃料油

ジェットエンジンを搭載した航空機用の燃料を、ジェット燃料油とよぶ。航空機の種別によって、灯油性状に近い「民間機向け」、ガソリン性状に近い「軍用機向け」の二種類に大別される(※9)。なお国内線の航空機には航空機燃料税(1キロリットル当たり18,000円(※10))が課税されているが、国際線向けは石油税を含め非課税である。

※9. ジェット燃料油の需要の大半が灯油性状に近い「民間機向け」である。
  ※10 2011年4月1日、税率が26,000円から18,000円に引き下げられた。

第5項 ナフサ

ナフサは、原油から得られる最も軽質の液体で、粗製ガソリンとよばれることもある。オクタン価を向上させるガソリン基材の原料となるほか、その98%以上は石油化学の原料となる。身近な生活の中にも、プラスチック製品、化学繊維製品など、数多くのナフサ製品がある。

第6項 その他の石油製品

上記の他には、潤滑油、B重油、ワックス、アスファルトなどがある。
潤滑油は自動車用の「モーターオイル」が一般的であるが、工業用を中心に種類・用途は1千種以上にも及ぶ。
 B重油はかつて、船舶のディーゼルエンジン用などに使用されていたが、用途の変化によりA重油とC重油に需要が移ったため、ほとんど生産されなくなっている。
 ワックスは蝋(ロウ)分のことで、石油系はパラフィンワックスと総称される。アスファルトは道路の舗装用に使用されるほか、接着・粘結・防水用にも供される。また、余剰となっているアスファルトの有効活用が石油業界における課題の一つとされており、製油所における自家発電用燃料としての利用も進んでいる。

第7項 新エネルギー・石油代替エネルギー
  1. 天然ガス
     天然ガスは、化石燃料の中では地球温暖化ガスの排出量が少なく、環境にやさしいエネルギーとして注目されている。さらに、天然ガスは中東に偏在する石油とは異なり、世界的に分散して存在するエネルギー資源である。最近では、都市ガス・LNG 火力発電用としての利用のほか、天然ガス自動車の普及に伴って、自動車用燃料としての利用拡大も目立っている。
  2. メタノール
     メタノールは、主に天然ガスを原料に生産され、単位あたりの水素含有量も多いことから、燃料電池用の水素を取り出す水素キャリアとして注目されている。
  3. ガス・トゥー・リキッド(GTL)
      天然ガスを特殊な技術で常温液化したものを、ガス・トゥー・リキッド(GTL)という。GTLは自動車の排気ガスを浄化する触媒を劣化させる硫黄分をほとんど含まないことから、次世代燃料・低公害燃料として注目されている。硫黄分を含まず、常温で液体となる性状は、燃料電池の水素供給源としても注目されている。
  4. ジメチル・エーテル(DME)
     ジメチル・エーテルは、天然ガス、石炭等を原料として製造され、LPガスに類似した物性を有する液化ガスである。また、硫黄分を含まず環境にも優しいことから、クリーンなエネルギーとして、今後は、LPGや軽油の代替利用促進が見込まれている。
  5. 燃料電池
     燃料電池は水素を酸素と反応させて電気を得る仕組みで、この反応で排出されるのは水だけという究極的なクリーンエネルギーである。ただし、自然界では水素がそのまま存在しないので、水素を多量に含む「天然ガス」、「メタノール」、石油系の「炭化水素油」を改質して取り出す方法が有力視されている。
     分散型のエネルギー供給源として、大規模施設から家庭まで、広く普及することが予想されている。
     自動車関連での利用では、我が国では経済産業省が2002年から2010年にかけて実施した「水素燃料電池実証プロジェクト(略称JHFC)」において、国内に14基の水素ステーションを整備し実証実験が行われ、2011年1月には自動車会社3社(トヨタ自動車、日産自動車、本田技研工業)とエネルギー事業者10社が、燃料電池自動車を2015年から市場に本格導入を開始することについて共同声明を発表した。
  6. その他のエネルギー源
     日本近海の太平洋の深海底部にも大量に存在が確認されている「メタン・ハイドレート」は、深海の圧力によって、天然ガスに近い物質がシャーベット状になったものと思われる。
     植物を工業的にアルコール化した「バイオマス」などの利用も実用化に向けた取り組みが進んでおり、石油業界では2006年に「2010年度には約36万キロリットルのバイオエタノールを原料として生産されるバイオETBEをガソリンに配合する」ことを目指すことを決定し、2013年2月時点で約3,130ヵ所のSSでバイオガソリンが販売されており、当初の目標は達成された模様である。
     「太陽光」や「風力」、「地熱」、「潮力」なども、環境負荷がないゼロ・エミッションの自然エネルギーとして利用促進が図られている。

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