検定試験テキスト −ゴム取引の基礎知識−

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第1章 ゴムの商品知識

第1節 ゴムの商品特性

第1項 天然ゴムと合成ゴム

自動車や航空機のタイヤ、各種産業用ゴム製品、競技用ボール、医療用手袋などゴム製品を作る原料には、天然ゴム(Natural Rubber)と合成ゴム(Synthetic Rubber)が使用される。合成ゴムが主として石油化学工業で生産される化学製品であるのに対して、天然ゴムはゴム樹(学名ヘベアブラジリエンシス=Hevea Brasiliensis)から採取される一次産品である。いずれも強くて弾力性があり、金属や繊維、プラスチックなど他の材料とは一線を画す材料であるといえる。
 天然ゴムと合成ゴムの使用割合は、国際ゴム研究会(* IRSG=International Rubber Study Group)の統計によると、2012年の全世界のゴム消費量(2,586.9万トン)のうち天然ゴムは1,092.4万トンで42.2%、合成ゴムは1,494.5万トンで57.8%を占めている。天然ゴムの比率は1960年代半ばから1990年代まで30%台(ただし1978〜1980年は29%台)であったが、2000年以降、40%台で推移している。
 日本における天然ゴムの需要構造は、消費量全体の約90%をタイヤ用途が占める。これに比べ合成ゴムでは約50%と小さく、天然ゴムのタイヤ依存度がきわめて高いことがわかる。天然ゴムの特性は一般的には弾力・伸長・粘着・耐久性に優れていることだが、タイヤ用材料としては内部発熱が低く、破壊強度が大きく、また金属との接着性がよいなどの特性をもっている。このため乗用車用の小型タイヤよりもトラック・バス用の大型タイヤに、より多くの天然ゴムが使用される。
 ゴムという言葉はチューインガム、アラビアゴムなどの植物性樹脂のガム(gum)からきている。ラバー(Rubber)は英語で「こすって消す」(rub out)という意味で、字消しに由来する。またドイツ語でゴムを意味するカオチューク(kautchuk)やフランス語のカオチュー(caoutchouc)はインディオの言葉で「涙を流す木」を意味しており、ゴム樹が白い樹液を出すことに由来するといわれている。

*【国際ゴム研究会の概要】
  1. 設立年月日:1944年8月
    • 1934年より活動していた国際ゴム規制機構(IRRS)の発展的解消を受けて、1944年8月に設立。
    • 国際天然ゴム機関(INRO、1999年10月協定終了)は天然ゴムのみを対象としていたのに対し、IRSGは天然ゴムと合成ゴムを対象としている。
  2. 本部所在地: シンガポール
  3. 加盟国(2013年7月1日現在)
    カメルーン、コートジボワール、EU(28カ国)、インド、日本、ナイジェリア、ロシア、シンガポール、スリランカの35カ国
  4. 目的
    (1)天然ゴムおよび合成ゴムの生産、消費、取引に影響を及ぼす問題を議論するフォーラムの開催、ゴム市場およびマーケット・トレンドの透明性向上に資する世界のゴム産業の包括的な統計情報の収集と普及
    (2)関連する他の国際団体との協働

  5. 最近の動き・今後の課題  
    (イ)1999年10月に国際天然ゴム協定が終了したため、INROの活動の一部(一次産品共通基金プロジェクト等)を引き継ぐことになり、活動規模が拡大した。  
    (ロ)事務局のホスト国である英国が2008年6月末をもって脱退したため、2008年6月に事務局をシンガポールへ移転した。

(出所:外務省HP、IRSG資料を元に東京商品取引所作成)

第2項 ゴムの歴史
  1. コロンブスの発見
     ゴムを文明社会に初めて紹介したのはコロンブスといわれている。彼は2回目の新大陸渡航(1493〜1496年)の際にハイチ島に上陸し、原住民の子供たちが弾むボールを使うのを見て、この奇妙なボールをヨーロッパに持ち帰った。しかしその時は実用化されることはなく、その奇妙な物質が本格的に注目され出したのはコロンブスの発見から約240年後のことであった。
     1736年、フランスのパリ学士院は緯度観測のため南米に探検隊を派遣した。その一員だったラ・コンダミンは、南米ペルー地方ではヘベーと呼ばれる樹木から樹液を採取し衣服や靴に塗り防水の役目を果たしているという報告書と、黒い固まりをパリに送った。その後、次第にゴムは科学者たちの研究の的になった。
  2. 大英帝国のゴム支配
     天然ゴムの学名は「ヘベアブラジリエンシス」という。もともと野生のゴム樹が繁殖したのはブラジルのアマゾン川流域だけで、“黒い黄金”と呼ばれるほど高価な貴重品であった。
     18世紀から19世紀前半にかけ産業革命に成功したイギリスでは、天然ゴムの使用量は増加したが供給源はアマゾン川流域に限られていたため、野生の天然ゴムを移植してイギリス圏である東南アジアでゴム農園を作り、ゴムを独占することを企図した。
     イギリスのH・ウィッカムは1876年、ヘベアブラジリエンシス(トウダイグサ科・ヘベア属・半落葉族)の種子7万粒を、禁輸政策をとっていたブラジルから持ち出すことに成功し、種子は直ちにイギリスの植物園に蒔かれ約2,800粒が発芽した。その苗木はセイロン島やシンガポールなどに運ばれ、これらが成長してマレー半島周辺が栽培ゴム樹の母体となった。現在の天然ゴムが基本的にヘベア樹一種なのは、この時の事情によるものである。
     オランダも帝国主義的な天然ゴムの移植・栽培を試みたが不成功に終わり、イギリスは第二次世界大戦で日本軍が東南アジアを占領するまでの長い間、天然ゴムを独占することになった。
  3. 加硫ゴム」の発見
     原料ゴムにカーボン等の補強材を混合し、さらに少量の硫黄と助剤を加えて成形したのち加熱すると、強靭で弾力性をもったゴム製品ができあがる。これを「加硫ゴム」と呼ぶ。また加硫前のゴムを「未加硫ゴム」という。この加硫の発見が、天然ゴムの需要増大につながる結果となった。
     加硫を発見したのは米国・コネチカット州生まれのチャールズ・グッドイヤーである。いくつか説があるが、その内の一説は以下の通りである。グッドイヤーは1839年冬のある日、研究室で眠ってしまい、彼のゴム靴に薬品(硫黄)がこぼれ、それがストーブによって加熱された。翌朝、彼が目を覚ますとゴム靴の弾性が強くなっていることに気づいたというわけである。
     さらに4年後の1843年には、イギリス人トーマス・ハンコックが加硫ゴムの本質がゴムと硫黄の化学結合の産物であることを見抜き種々の加硫法を開発、ゴム加工技術としての加硫技術を確立した。これにより天然ゴムは工業材料として需要が増加し、近代ゴム工業が本格的に開花することになった。ハンコックが“ゴム工業の父”と呼ばれる所以である。

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第2節 天然ゴム

第1項 天然ゴムの品種と生産方法

天然ゴムはラテックス(Latex)、視覚格付けゴム(VGR=Visually Graded Rubber)、技術的格付けゴム(TSR= Technically Specified Rubber)に大別される。また視覚格付けゴムの代表品種はRSS(Ribbed Smoked Sheet)であるので、天然ゴムは@ラテックス、ARSS、BTSR の3種類に分類されることもある。

  1. ゴム樹の切り付け(タッピング
     ゴム樹は植樹してから6〜7年で採液可能となり12〜14年で最も多くの樹液を産出する。その後25〜30年で産出が少なくなり植え替え時期となる。近年のクローン技術の進展により、収量の多い新種のゴム樹も開発されている。
     天然ゴムの生産は、ゴム樹の幹を特殊ナイフで切り付け、流出した樹液(フィールドラテックス=Field Latex)を収集するところから始まる。具体的には、根元から1メートルほどの高さのところを特殊ナイフで2mmほど削りながら斜めに溝を切り付け、そこから滲出(しんしゅつ)する乳液状のラテックスを容器(カップ)で受け、収集する。この採液法を「タッピング」と呼ぶ。ラテックスは日に当たると自然凝固してしまうので、タッピングは通常、早朝に行う。
  2. ラテックス(Latex)
     タッピングにより収集されたフィールドラテックスには25〜30%のゴム分が含まれている。これに自然凝固を防止するためアンモニア(安定剤)を加え、遠心分離機にかけ濃度を60%程度に引き上げる。その濃縮された液状のゴムをラテックスと呼ぶ。タイヤコードのディッピングをはじめ糸ゴム、ゴム手袋、あるいは接着剤などに使用されている。
  3. 視覚格付けゴム(VGR):RSS(Ribbed Smoked Sheet)
     視覚格付けゴムは、品質格付けを「天然ゴム各種等級品の国際品質包装規格(通称グリーンブック)」と、これに基づき調整された公式国際見本に準拠した視覚検査により行う。フィールドラテックスを凝固させシート状に成型するので「シートラバー(ゴム)」とも呼ぶ。その中で代表的品種がRSS(燻煙シート)である。
      RSSの生産方法は、まずフィールドラテックスに酸(蟻酸、酢酸など)を加えて凝固させたのち、シーティングロールにかけ水分を絞り、厚みを調整(3〜4mm)したうえ、別の波状成形ロールに通してシート表面に波状(Rib)を作る。この波状がシートとシートの粘着を防ぐ役割を果たすほか、シートの水分乾燥を容易にする。これをUSS(Unsmoked Sheet、未燻煙シート)と呼ぶ。色は白色である。
     次に、集められたUSSを水洗いし付着した異物を取り除いたのち、燻煙室に1週間ほど吊るして燻煙・乾燥する。そこでシートはアメ色または褐色になる。燻煙を終えたシート(Smoked Sheet)は一枚一枚等級ごとに選別・格付けしたのち、計量のうえ成型用ボックスの中に積み重ねてプレス成型し、直方体のベールを作る。出来上がったベールには、ベールとベールの粘着防止とマーキング下地のために白色のタルカンパウダーを全面に塗る。このコーティングもグリーンブックに基づき行われる。1ベールの標準的サイズは縦・横約48cm×高さ約60cm、重量は111.11kgである。最後にマークを刷り込み、出荷される。
     選別・格付けは、グリーンブックに基づき、外観、色、ゴムの中に含まれるゴミなどの不純物の度合いやキズ、燻煙の程度により1X号、1号、2号、3号、4号、5号に等級分けされる。1X号が最上級品だが数量がほとんどなく、実質1号から5号までの5等級に分類されることになる。このうち最も生産量が多く、国際取引量も多いのが3号である。このRSS3号は東京商品取引所、また海外ではタイ農業商品先物取引所(AFET)とシンガポール取引所(SGX)(2011年5月にシンガポール商品取引所(SICOM)からゴム市場を移管)、および上海期貨交易所(SHFE)に上場されている。
  4. 技術的格付けゴム:TSR(Technically Specified Rubber)
     TSRは、技術的規格に基づき格付けされたもので、その形状から「ブロックラバー(ゴム)」と呼ばれている。マレーシアで開発され1965年から生産が開始された。マレーシアではこれを標準マレーシアゴム(SMR=Standard Malaysian Rubber)と呼ぶ。SMRのほかタイ(STR=Standard Thai Rubber)、インドネシア(SIR=Standard Indonesian Rubber)、シンガポール(SSR=Standard Singapore Rubber)、中国(SCR=Standard China Rubber)、ベトナム(SVR=Standard Vietnamese Rubber)などの国別標準規格がある。
      TSRは、等級により使用する原料構成が異なるのが特徴である。上級品ではフィールドラテックス100%(凝固させてから使用)や、純度の高い原料(凝固ゴム)を使用する。TSR20など中級グレードでは、カップランプ(ゴム液が収集カップの中で自然凝固したもの)かUSS、あるいはそれらをブレンドしたものを原料に使用する。
      TSRの製造方法は、これら原料を機械で粉砕、細粒化し、水洗いしたのち、熱風により短時間で乾燥させ、プレス成型してポリエチレンシートで包装する。成型後、ベールごとにサンプルを抜き出し分析試験を行い、その測定結果から技術的規格に基づき格付けする。試験項目はゴミ・灰分・窒素含有量・揮発性物質・ウォーレス可塑度・可塑度残留率で、これらすべてに合格したものに検査証明書が添付される。標準的なベールの大きさは約70×40×15cmくらいで、合成ゴムのベールとほぼ同じである。重さは1ベール35kgあるいは33.33kgが主流である。

天然ゴムが出来るまで:図

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第3節 合成ゴム

第1項 合成ゴムの品種と製造工程
     
  1. 合成ゴムの品種
    (1)合成ゴム開発の歴史
     合成ゴムは、天然ゴムの化学構造の研究からスタートした。1860年にC.ウィリアムスが天然ゴムの基礎単位がイソプレンであることを発見したことが契機となり、その後1879年から1913年にかけて多くの学者により合成ゴムをつくる研究がほぼ確立された。合成ゴムの工業化は、天然ゴムの生産拠点を持たず天然ゴムの入手に苦慮していたドイツや米国が中心となり進められた。2つの世界大戦を経る過程で軍需用の資材として開発が進められ、また第二次大戦後は世界のモータリゼーションに伴い、自動車のタイヤや部品材料として多種多様な品種が開発され発展してきた。
    1933年、ドイツのIG(イー・ゲー)社はナトリウム触媒を用いて最初の合成ゴム「ブナS」(スチレンブタジエンゴム=SBR)の開発に成功、翌1934年には耐油性ゴム「ブナN」(アクリロニトリルゴム=NBR)の開発にも成功している。こうしてドイツは世界に先駆け合成ゴムの工業化を果たした。この頃政権を握ったヒットラーは軍需資材としてゴムの重要性を理解し、すべて軍需向けに増産の計画を推進、その結果、1943年には「ブナS」の生産量は11万トンに達することとなった。
     一方、米国では、第二次世界大戦までイギリスから天然ゴム、ドイツから「ブナS」および「ブナN」を輸入することができたが、1942年に日本軍がマレー半島などを占拠したため天然ゴムの輸入ルートが絶たれ、またドイツとの開戦によりブナ系ゴムの入手も不可能となった。このため当時のルーズベルト大統領が、合成ゴムの製造を国家プロジェクトとして推進した結果、ブナ系ゴムの国産化に成功し1945年には82万トンの生産量に達した。このゴムは、Government Rubberの頭文字をとって「GR−S」(SBR)および「GR−A」(NBR)と呼ばれた。また米国では1931年に、ナイロンの発明者であるデュポン社のW・H・カローザスが最初の本格的特殊合成ゴムであるクロロプレンゴム(CR)の開発に成功していた。
     このほか欧米では1940年代にアクリルゴム(ACM)、ブチルゴム(IIR)、ウレタンゴム、シリコーンゴム、1950年代に入るとクロロスフォン化ポリエチレン(CSM)、フッ素ゴムなどの特殊合成ゴムが次々と開発された。1954年米国の化学会社数社がチーグラー・ナッター触媒を用いて新しい構造をもつポリイソプレンゴム(IR)の開発に成功、このポリイソプレンゴムこそ、天然ゴムと同一の分子構造(シスポリイソプレン単位)をもつ「合成天然ゴム」であった。
     さて、日本で合成ゴムが国産化されたのは1959年で、翌1960年の生産量はわずか2万3,000トン。その年の天然ゴム輸入量は17万2,500トンであった。その後、モータリゼーションの進展とともに合成ゴムの需要は拡大し、国産化7年後の1966年には23万2,700トンを生産、その年の天然ゴム輸入量22万9,000トンを上回った。その後も順調に生産量を伸ばし続け、1978年には100万トンの大台を突破した。近年は、中国の急伸で相対的地位が下がったものの、それでもわが国の年間生産量は162.2万トン(IRSG統計、2012年実績)に及び、中国、米国に次ぐ世界第3位である。

    (2)合成ゴムの種類
     合成ゴムの形態は、固形ゴムが大部分を占めるがゴムラテックス、液状ゴム、粉末ゴムなどの形態もある。これら市販されている合成ゴムの種類は約100種類を超えるとされ、それぞれの特性を生かした使われ方をしている。例えばタイヤ1本でも部材によって使われるゴムが異なる。代表的な品種はスチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、ポリイソプレンゴム(IR)、アクリロニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM、EPTともいう)、ブチルゴム(IIR)などがあげられる。
     機能別に分類すると「汎用ゴム」と「特殊ゴム」に大別できる。汎用ゴムは比較的安価で幅広い用途に使用されるゴムの総称であり、タイヤ、履物、防振ゴムなど耐油性や高度な耐老化性などの性能を必要としない用途に使用される。SBR、IR、BRがこの分類に属し、また天然ゴムもこの汎用ゴムに分類される。
     特殊ゴムは、耐油性・耐熱性・耐候性など天然ゴムにない特性をもち、主に工業用品に用いられるIIR、EPDM、CR、NBRに加え、卓越した耐油性や耐熱性をもち比較的価格の高いシリコーンゴムやフッ素ゴム、アクリルゴムなどがある。

    (3)汎用ゴム
     最大の汎用ゴムといえば天然ゴムだが、合成ゴムではSBRが該当し、自動車タイヤの主原材料として天然ゴムとともに必要不可欠な存在である。SBRには重合法(製造方法)によって乳化重合SBR(E−SBR)と溶液重合SBR(S−SBR)があるが、一般にSBRといった場合はE−SBRを指す。
     その特性は天然ゴムに最も近く、耐熱性・耐摩耗性にも優れ、また加工性が良く天然ゴムや他の合成ゴムとのブレンドも容易というバランスのとれたゴムで、汎用合成ゴムの王様といえる。
     しかし20年程前から天然ゴムの使用比率の高いラジアルタイヤが台頭し、またタイヤ自体の差別化が進むにつれ標準化されたグレードは減少し、むしろ味付け(分子構造の設計)が自在なS−SBRを始めとしたスペシャリティ製品のウエートが高まってきている。
     BRはゴム弾性が最も高く、また耐摩耗性・耐屈曲性に優れるためゴルフボールのコア材料としても使用されている。タイヤでは摩耗性の要求されるトレッドやカーカスに多く使用される。
     IRは「合成天然ゴム」と称されるだけあり、天然ゴムによく似た、最もゴムらしいゴムと言われ、あらゆる用途で天然ゴムの代替に使用されてきた。しかし天然ゴムとの価格競争が厳しく、なかなか需要は伸びてこなかった。

    (4)特殊ゴム
     IIRは空気を通しにくい性質(気体不透過性)から、かつてはタイヤのチューブ材料として使用されたが、チューブレスタイヤが一般的となった今日では、改良品種(塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴム)がSBRや天然ゴムとブレンドしてインナーライナーサイドウォール用に使用されている。
    耐候性・電気絶縁性に優れることから電線・電纜に、また振動減衰性を生かし防振・防音材などにも使用されている。
     EPDMは唯一、耐油性でない特殊ゴムである。その特性は、耐オゾン性・耐候性・耐熱性・耐薬品性・低温特性が優れており、自動車部品用途に需要を伸ばしてきた。
     CRは耐熱・耐候・耐オゾン・耐油・耐疲労・耐焔性など全般にわたりある程度の特性をもつ、“丸みのあるゴム”として工業用品を始め広い分野で使われている。また輸出も多く国内生産の半分以上を占めている。
      NBRは耐油性特殊ゴムの代表である。耐油性のほか耐熱性、耐ガス透過性、電気特性、機械的強度に優れることから、オイルシール、ホース、ダイヤフラム、ロールなど自動車部品や工業用品に広く用いられている。
     シリコーンゴムは耐熱200℃以上、耐寒マイナス70℃以上と温度に極めて強いゴムである。また電気絶縁性・難燃性・無毒性なども備えることから自動車部品、電子・電気機器部品、医療関係など幅広く使用されている。
     アクリルゴムは自動車と自動車部品の進歩に伴い開発されたゴムである。耐熱性・耐潤滑油性・耐オゾン性に優れた性質をもつ。
     フッ素ゴムは250℃以上の連続使用にも耐える、最も耐熱性に優れたゴムである。耐熱性以外にも耐油・耐薬品・耐溶剤・耐焔・耐候・耐オゾンなどあらゆる性能で他のゴムを寄せ付けない高度な性質をもち、他のゴムでは耐えられないような過酷な環境で用いられる特殊ゴムである。

    (5)合成ゴムの生産量
     世界の合成ゴム生産量は1,509.4万トン(IRSG 統計、2012年実績)で、21世紀に入り増加傾向にある。このうち日本は162.2万トンで世界の10.7%を占めており、ここ数年は生産量に大きな変動が見られない。2007年まで首位であった米国は231.1万トンで、中国が3年連続でトップになった。
     近年、大幅に生産を伸ばしているのは中国とロシアである。中国は2001年に105.2万トンだったが、2012年は381.9万トンと急増、ロシアも91.9万トンから139.7万トンと増加を示している。
     わが国では、合成ゴム総出荷量154万トン(日本ゴム工業会、2012年)のうちSBRが約72万トンで全体の約46.5%を占め、さらにそのうち55.8万トンがSBRソリッド(固形ゴム)である。BRは32.6万トンで、次いでEPDMが約17万トンとなっている。
  2. 合成ゴムの製造工程
     合成ゴムの大半は石油化学工業で生産されるゴムである。原油を川上とすれば合成ゴムは最も川下に位置する。原料からの流れをたどると、まず原油は石油精製会社で精製され、ナフサ、灯油、軽油、重油、液化石油ガスなどの石油製品になる。このうちのナフサが石油化学工業の元原料になり、このナフサを700〜800°Cの高温で熱分解するとエチレン、プロピレン、C4留分、C5留分、分解油等に分離する。これらは“石油化学工業の基礎製品”と呼ばれ、これらを原料として多くの誘導品が生産される。汎用ゴムのSBRとBR、耐油性特殊ゴムのNBRはC4留分から抽出されるブタジエンを主原料としている。
     SBRではE−SBR、S−SBR ともにブタジエンとスチレンを原料とする。石鹸水の中で重合させて作る(乳化重合法)のがE−SBRで、溶剤の中で重合させて作る(溶液重合法)のがS−SBRである。もう少し詳しくみると、E−SBRはブタジエンとスチレンに水と乳化剤、開始剤などの薬液を加え、一定の反応率まで重合させる。そこから未反応なブタジエンとスチレンを回収してできたのがラテックスである。天然のラテックスはゴム樹によって自然生成されるが、合成ゴムラテックスはこのように化学的に作り出される。
     そのラテックスを濃縮すれば乳化状のSBRラテックスとして出荷されるが、濃縮せずに劣化防止剤や伸展油を加えて凝固させ、細かい固まりにしたのち、脱水→乾燥→計量・成型→包装の手順を経れば、固形のSBRとして出荷されることになる。E−SBRの場合、通常の結合スチレン含有量は23.5%であるが、スチレン含有量が50〜60%と高いSBRをとくにハイスチレンゴム(HSR)と呼び、主にレーシングタイヤのトレッドコンパウンドとして使用される。
     BRも同様にブタジエンが原料である。これに溶剤、触媒を反応器に入れ連続的に重合する。得られた重合物から未反応ブタジエンおよび溶剤を除去し、乾燥→成型工程を経て包装される。NBRはブタジエンと繊維原料でもあるアクリロニトリルを原料とする。
     IRはC5留分から抽出されるイソプレンを原料とする。溶剤に原料モノマー(イソプレンモノマー)を加え有機金属化合物を触媒として溶液重合法により重合する。このポリマー溶液から未反応イソプレンと溶剤を回収し、得られたゴムを脱水→乾燥→計量・成型→包装して製品となる。EPDMはエチレンとプロピレンの共重合体に第3成分を少量加え溶液重合法によって作り出される。
原油から合成ゴムができるまでの流れ:図
一口メモ

ここでゴムラテックスについて補足する。ゴムラテックスは水中にゴムが分散した懸乳濁液をいい、タイヤやゴムベルトのコード用のほか塗工紙用、繊維処理用、プラスチック用、建築資材用、接着剤など需要分野は多岐にわたる。天然ゴムラテックスが世界で約100万トン、合成ゴムラテックスが約200万トン生産・消費されていると推測されている。「ラテックス」という言葉はもともと“液体”を意味する中世ラテン語で、19世紀の初めに植物学者が樹木から出る乳状の液体に対して名付けた言葉である。19世紀の後半からゴム工業でも用いられるようになった。



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